先代社長がアトツギを育てる際に、先代社長しかアトツギに教えられないことがある。それは、帝王学だ。帝王学は、オーナー経営者にしか教えることができない哲学だ。
一方で、会社を経営するという事は、会社に利益を残さないといけない。利益を残して初めて社会に貢献することができるし、何十年も何百年も生き残り続ける会社になる。
この2つは実は意外と対立する事がある。例えば、会社に利益を残すという事は、損得勘定で物事を考える必要がある。しかし、会社組織の中で損得勘定だけで、あるいは、損得勘定を物凄く強く出してしまうと、会社組織が上手く動かないという事も多々ある。
いくつか事例を見てみよう。
会社として利益を残すという意味では、1円でも経費を削り利益を最大化させることが使命となる。しかし、例えば、福利厚生でスタッフに会食を提供するときに、1円でも経費を削るという事を考えると美味しくもない食事が提供されたら、スタッフのモチベーションはどうだろうか?おそらく、スタッフのモチベーションは最悪最低となり、次の日からの仕事にも影響する。そもそも、損得勘定を強く出し過ぎると、会食そのものがナシ!となってしまう。これだと、スタッフ同士のコミュニケーションが取りにくくなり、新しいアイディアやチームとしてやっていく上でのロイヤリティ等が阻害され、みんなの心がバラバラになってしまい、上手くいかない事がある。
似たような事例として、先代社長やアトツギがスタッフにご飯を奢るとするときに、スタッフに割り勘で支払させたらどうだろうか?やはり、このケチな上司、あるいは、アトツギについていけないや、と考えるのがセオリーではないだろうか。
また、他の事例としては、設備投資する際にケチって少しグレードの低い設備を導入したとする。しかし、日々のオペレーションが上位グレードに比べて時間がかかってしまったら、年間で見たときの生産性が格段に低くなってしまう。しかし、それは設備投資する際に見積には含まれていない(ちょっと気の利いた営業マンならその辺を提案するだろうがw)。初期投資をケチったが為に、年間での生産性を落としてしまう結果になったりする。
他にも例えば、経費をケチろうとして人件費を削ったとする。そうすると、なかなか採用自体ができなかったり、優秀な人材が集まって来なかったりする。これだと組織を作るのに大変な苦労と時間がかかってしまう。
この様に、損得勘定と組織の活性化という意味では、相反することが多い。
では、これはどうしたら良いのだろうか?
P/Lで利益を出そうとし過ぎないこと。B/Sも使って利益を出すという事を考えることと、人に対してはあまりにも行き過ぎた損得勘定は控えるという事を意識しないといけない。
特に、人に対しては損得勘定で接してしまうと、必ず痛い目にあう。人は経費として見られたくないからだ。そりゃあ、当然だよね。人は生産性の高い低いが感情で大きく変わることもある。これは人間として当たり前の話で、やる気がある時は生産性が高くなるわけだから、やる気にさせるのが経営者としては大切な事なんだ。
たまに、この損得勘定が物凄く強い人に出会うことがある。例えば、一人で営業をするなら、とても優秀だ。だけど、チームで売上を上げようとしたら凄く下手くそになる。野球とかでも選手としては優秀だが、監督になると三流みたいな人に似ている。
アトツギや先代社長は選手としてはイマイチでも構わない。だが、監督としては一流にならなければ、組織が育つことはなく、じり貧となり変化に対応できず、結果的に会社が潰れてしまうことになる。
この様に、経営者やアトツギは損得勘定が強すぎては余り良くない。個人事業主として一人でやっていくのであれば問題はないとは思うが、組織があり人を活かして会社を目標に向かって成長させないといけない場合は、帝王学を学んで目先の損得ではなく、少し長い目で見ていく必要があるのだ。